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小川健太郎、プロデュースロッドPart2となる『ナンデモ・スピニング/弱』(文/小川健太郎)

ある日、愛用していた昔(80年代)のオフショアロッドを研究すると、全くシンプルな設計になっていることがわかりました。ナイロンライン全盛の時代です。しなやかなのに、不意のカジキにも屈さないほどのパワーがあるこの竿。このコンセプトを、いつかライトゲームロッドに、という夢を叶えたのが、このグリッサンド72です。

折しも、シンガポールからの7ft代のミドルレングスの依頼があったことから実現しました。基本はシンプルです。不意の大物が掛かるまで、何も特徴を感じさせないように手元に存在させ続けるための設計。重量バランスを継ぎのセクションだけで完成させ、フロントグリップをゴムグリップへと変更。古い素材に新しいパーツというTULALAの基本構成をそのまま体現しました。

ミドルレングスの理由

笑い話に見えますが、本当は旅先の経験で、お店やトイレに持って入れるギリギリの長さです。食卓の横に立てかけても迷惑をかけにくく、巨大な扇風機(熱帯エリアでは、ご注意下さい)にも当たりにくい程度の長さを突き詰めたところ、橋桁の下や狭いエリアでも、開けた河口部でもなんとか使える長さになっています。

バットパワー

ラインとリールが強ければ、80台のシーバスを暴れさせずに取り込める力がありました。旧モデル(Glissando73)ほどの異常な強さ(9kg以上をリフト)はありません。

ソフトなティップ

旧モデル73ではグラスでしたが、こちらはバットからのフルカーボンです。その分若干感度が上がったようで、4Lbのフロロラインでのわずかなアタリを拾えるようになっています。

Glissando=グリッサンド。
楽器のテクニックで、高音域と低音域の間で、滑らかな移行を表現する奏法。ピアノの場合は手の爪側を使い、右から左、または左から右へ滑らせて演奏する。ギター等の弦楽器の場合は運指の指を弦に乗せて滑らせる。

【手にした瞬間から、手の延長となるように】

橋桁やオーバーハングなど、忍び寄って釣る接近戦。そこから急激に開けたエリアでのそこそこのロングキャスト。カヌーやウェーディング時、ティップまで手が届くコンパクトさ。そして突然の潜り込みへ対応できる強靭なパワー。

旅に必要なすべてを盛り込んだ、「持って歩けるギリギリの竿」の登場です。パックロッドや2ピースほど小さくはなりませんが、逆に万一の大物に対しては十分。ロングロッドほど飛距離は出せませんが、小場所も大場所も自在に出入り可能です。

手にした瞬間から、手の延長となるように。絞り込まれると、ど真ん中のレギュラー。筋肉のように粘り、耐え続けるファイトを可能にする旧素材カーボンを探し、素直に、シンプルなテーパーの竿に仕上げたのがグリッサンド72です。

この竿の芯にあるのは、ただ、それだけです。軽いルアーは細くなるティップ側を使い、重いルアーはバット側で投げる、人間の身体がそうであるように、誰でも簡単に使いこなすことができる竿です。トータルの硬さのイメージとしては、シーバスロッドを上下から均一に縮小したバスロッド。現代のスピニングのバスロッドにはないパワーをもち、シーバスロッドにはない選択肢の幅広さがあります。

リールやライン、ルアーなどを選ぶ際、小型魚から中型魚に使うほとんどのものをチョイスできるように、TULALA流の旅・セッティングを施しました。それぞれの専門の竿には敵いませんが、太刀打ちできる可能性がある竿に仕上がっております。

グリッサンド72 -スペック-

長さ
7.2ft
重さ
160g
テーパー
レギュラーテーパー(セミファスト)
ライン(MAX)
PE2号/フロロ・ナイロン16Lb
ルアー
1.8g~45g
リール
1500~4000番台(2500番基準)
対象魚
~10Kgの魚
PRICE
39,800円(税抜)/42,984円(税込)