目指したのは、なにかの代用品ではない、ベイトタックルのメリットを生かしたシーバスロッド。
シーバスにベイトタックルを初めて使ったのは随分昔の話し。
今は無き湾奥サーフのウェーディングだった。
当時はブラックバス用のロッドの中で、出来るだけ長く、出来るだけ強い物を代用し、サブサーフェイスルアーで沖のブレイクを狙い撃つ釣りだった。
ただ、当時のリールはソルトに対応したものが確立されていない事と、まだPEラインではなくナイロンラインを使っていたことが今と異なり、一部のマニアックな人たちが楽しむ趣向の強いジャンルだった。実際に当時の大規模なシーバス大会に参加した時にも、100人中1人もベイトタックルは居なかった。
あれから20数年が立ち、シーバスフィッシングにベイトロッドを使う事は、それほど珍しい事ではなくなった。
確かにまだまだスピニングタックルが多勢ではあるけど、それでもメジャーポイントへ行けば何人かはベイトタックルでキャストする姿を見る事が出来る。
もはやそれは特別な事ではない。
あの頃と何が変わったのか。
それはやはり、ラインとリールの進化が大きいと思う。
ベイトでもストレスなく使えるPEラインの登場と、そのラインへ対応したリールが各社から登場した。
では、ロッドはどう変わっていったのか。
各社から様々なロッドがリリースされているが、20数年前の「何か別の釣りで使うロッドの代用」から変わっていないものが、正直まだまだ多いと感じた。
ビッグベイト用などにみられる硬いティップと、曲がらないブランク。もしくは「シーバスだから」という理由でライトライン(PE1号以下)に合わせた高弾性でハリの強いロッド。
確かにそれらのロッドは「そういう釣り」においては良いものではあるし、一般的なシーバスルアーも使えない事はない。しかしそれが自分の釣り、特に「ベイトを使った方が有利」と思われる状況にミートしているのかと問われたら、残念だけど・・・Yesでは無かった。
そこからシーバス用ベイトロッドとしてのCorona89の開発が始まった。
自分の中のベイトタックルのメリットとは、キャストアキュラシーや飛距離というものでは無い。一般的に言われるそれらの事は、慣れればスピニングでも出来るのでアングラー次第の「技術的な話」だ。そうではない。もっと物理的な優位性がベイトタックルにはある。
それは、「タックルがヘビーになり過ぎずに、太い糸を使える」という事であり、この恩恵が計り知れないという事にアングラーなら気が付くはず。
日本各地でシーバスを追う旅をする私にとって、それが必要な状況は一年を通して確実に何度もやってくる。
スピニングじゃどうにもならなかったソレこそが、トロフィーサイズに近付く可能性を高める。最も手にしたい魚と近付く手段のひとつだ。
その為にスピニングで「硬く強く」を追い求めると、リールサイズを上げる必要があり、スピニング本来のメリットである扱いやすさやフィネス感から遠ざかってしまう。
また逆に、ビッグベイトに合わせたベイトタックルではキャストできるルアーが限られ、口を使わせるまで到達できない。
それを「ベイトは試練」という言葉に隠してはいけないと思った。
目指したのは、なにかの代用品ではない、ベイトタックルのメリットを生かしたシーバスロッド。
PE2号、リーダー30lb。10~32gのルアーを快適にキャストでき、時には56gぐらいのビッグベイトも使えるロッド。もちろん快適ではないが、スポット的にアンバランスでも投げる事が出来る。またベイトタックルのもう一つのメリットであるラインの操作性の高さを生かして、流れを読み確実にヒットゾーンへルアーを通す。やがて出る深く短いバイトへはティップが追従しつつ、太いフックをしっかりと突き刺す為のパワー。
ランカー特有のスローで幅の大きいヘッドシェイクでも、フックを保持する適切なカーブを描くブランクがもたらす安心感、そして太いラインを生かした「早い寄せ」で確実に主導権を取る。
※写真はプロトタイプ
ようは、「太いラインで、デカいシーバスをどう釣るか」の試行錯誤の先に、ベイトタックルという選択肢があるという事。
そんな想いで、このロッドを作った。
もちろんこれが答えの全てではない。
そんなにフィールドは甘くない事を我々アングラーは知っているし、それこそがこの遊びの一番楽しいところ。
でも確実に、攻略できる幅を広げる事は出来る。
このロッドを手にしたユーザーには、フィールドにて是非とも実感してもらいたいと思っている。
工藤靖隆
◇メインコンセプト
PEラインの持つメリットデメリットを把握し、飛距離、負荷分散、感度伝達など、メリットをトータルバランスで引き出すことができるガイドセッティング。
●モノフィラメント設計からPE専用設計へ
現代の釣りにおいて、ナイロンやフロロカーボンに代表されるモノフィラメントのラインでは妥協せざるを得なかった点が、PEラインの出現によって劇的な変化を迎えました。しかしながらPEラインがいろんなフィッシングスタイルに多用されるようになっても、釣り竿のガイドセッティングは旧態依然の従来のモノフィラライン仕様のままというのが実情です。従来のセッティングでは、PEラインのせっかくのよさが活かせず、 デメリットとすらなる事があります。
PEラインは、張りがなくラインのクセがつかないことが特徴。 モノフィラライン各種は進化したとはいえ、PEラインと比較して圧倒的に張りがあり、クセもつきます。 そのラインの張りとクセの特性から、リングサイズを大きくし、ガイド 数を少なく配置するのが従来。あくまでもこれらモノフィララインでの飛距離を優先していたからだと考えられます。
PEラインの場合、ガイド数を増やすことで、リングへの摩擦抵抗を軽減するという逆転の発想が必要でした。
●PE専用のガイドセッティング開発を通して
いくつかの事業で、これまで私自身はPE専用設定のガイドのセッティングを担当させていただく機会に恵まれました。その中には有名になった製品、ガイドシステムも存在しています。
張りがなく、クセがつかないPEラインは、数多くの小口径リングサイズを並べるセッティングが向いています。理由は、小口径リングだからリング間のラインのバタつきを抑えることができるからです。実際のフィールドで無風な状況はまずあり得ません。従来のように大きいリングサイズでガイド数が少ないと、リング内とガイド間隔でラインが暴れてしまい、逆に抵抗になりライントラブルとなってしまいます。このため以前より小口径リングでガイド数を増やすPEのセッティングを作ってきました。
また小口径を多数セットすることにより、ブランクのパワーをより発揮できます。 キャスティング時やフッキング時のブランクのパワーと感度のアップ、リフティングパワーアップ、さらに各ガイドのライン角度がスムーズになるので、リトリーブフィールがスムーズになり、誘いからファイティング時の無駄なポンピングが減り、バラシも軽減します。
こうして従来のセッティングから、従来製品の中にラインナップされた小口径製品を流用する形で、最初のPEセッティングが次々と生まれていきました。
●ストローセッティングへの進化
現在私が提案しているストローセッティングは、PEラインが主流になり、ガイド素材の軽量化が推し進められた近年、従来の専用設計では妥協せざるを得なかったところをトータル的に向上させたものです。
これにはガイドを生産するメーカーや世界中のアングラーのアイデアなど、携わった多くの方の努力や知恵が関わっており、当然私一人でなし得たものではありません。特にトップガイド製品の多様化やフランジ形状、トルザイト、SiC-S、アルコナイトといった選択肢の増加が、ニーズや価格帯に合わせたセッティングを可能にしてきました。
キャスティング時などに特にトラブルの多いティップにはガイドの形状とガイドポジションでトラブルレスなセッティングにしています。 また、ランディング時もスムーズにラインシステムが入る工夫もできるようになりました。これら技術の向上により、過酷な状況でもストレスなく集中できるはずです。 フリーフォール時などは、ラインの無駄なたるみがなくなるので、ラインの抜けもよりスムーズになっていることを実感していただけるはずです。
ガイド数が多く増えても従来の大口径型ガイドシステムと比較してロッドの自重は変わらず、場合によっては軽くなるモデルも多くなってきました。こうしたガイド開発の歴史とともに、キャスティングの飛距離もPE専用で制作してきた従来のセッティングより数%アップしています。敢えてデメリットをあげるなら、ラインを通すのが面倒なくらいです。 老眼の方はとくに…。(笑)
【2018新製品】ストローセッティングキャスト動画【TULALA】
ストローのように細く、小さな力でスムーズに通り抜けるように。
ストローセッティングによる新しいPEフィッシングの世界を、ぜひお楽しみいただけたらと思います。
前田製作所
前田純一
※ガイドセッティングは予告なく若干の変更が行われることが御座います。ご了承下さい。
※2022年カタログ表記にてRear Grip Length (cm)が「38」となっておりましたが、正しくは「33」となります。お客様にはご迷惑をお掛け致しましたことをお詫び申し上げます。
旅をしながら釣りをするには、出来るだけロッドに振り回されたくないな・・・という思いがある。 これは物理的なキャストや操作での事ではなく、ロッドの為に釣りを選びたくないってこと。 シーバスを求めた各地の旅では、様々なフィールドと出会うことができる。 リバーシーバスという括りでも、上流の激しい流れも在れば、中流域の瀬の釣りも在るし、広大な河口での潮を読む釣りも在る。 その多様性と美しさを五感で感じるのが、旅の釣りの楽しみの一つではあるけど、それはタックルチョイスという面では実は非常に難しい部分でもある。 どうやってフィールドへとアジャストしていくか、魚の行動を考え抜いて繰り出す一手。 初めて目にするフィールドでのファーストキャストでは、通いなれたいつものポイントとは比べ物にならないほど、アングラーとしての思考回路をフル回転させる。 その時に、ロッドの制約によって「キャストしたいルアーを変えなくてはいけない」という事が起きると、それはストレスと後悔を生むことになる。 例えばビッグベイト用の強すぎるロッドや、例えばスピニングのように細い糸を巻いたリール。 そう言った何かの代用品では、どうしても使うルアーに制約がついてしまうもの。 求めたのは、「これでもできる」ではなく「これが良い」という、シーバスを釣る為のど真ん中のベイトロッド。 それは、ベイトタックルを使う事が目的では無く、より複雑なロジックが絡み合うフィールドにおいて、太い糸を使いながらも確実にトレースラインをコントロールする為に、ベイトタックルを選ぶという事。 具体的に言うと、PE2号以上で9フィート前後の長さが求められるフィールドでは、間違いなくオーバータックルになってしまうスピニングよりも、ベイトタックルの方がルアーに神経を通わせ易くなる。これはリールを含む各タックルバランスの構造上の問題で、紛れもない事実だ。 だから、そのベイトがオーバータックルになってノー感じでは意味がないし、逆に軽量ルアーや小さな針に対しドラグを有効に使ったPE1号前後の細糸を使う場合は、スピニングの方が間違いなく良い。 だけど、必ず年に何回か、それじゃどうにもならないシーンが在って、そういう時に限ってトロフィーサイズが掛かるのがこの釣り。 だから、PE2号で9フィート前後を使う時の、ど真ん中のシーバス用ベイトロッドを作った。 魚がデカいとか、流れが強いだとか。ストラクチャーが濃くて、使いたいルアーは10gから30g、時にビッグベイトもあり…そんなフィールドで、ベイトタックルのパワーを最大限に生かしながら、幅広いウェイトのルアーに対応するロッド。 長い開発期間での、欲張ったり諦めたり光が差しこんだりの紆余曲折は、まるで未開のフィールドを歩く釣りそのものだった気がしてならない。 そうやって作り上げたコローナ89を、ぜひ皆様のフィールドで試していただき、その意味を実感していただければと思う。 工藤靖隆
Model | Corona 89 MSC-HX |
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Code | 89MSC-HX |
Action | RF |
Length (ft) | 8'9" |
Folded Length (cm) | 187 |
Rear Grip Length (cm) | 33 |
Rod Wt. (g) | 227 |
Mono Line (lb ,MAX) | - |
PE (# ,MAX) | 2.5 |
Cast Wt. (g) | 6~32 |
Price (¥ ,税別) | 63,000 |