2022.07.04
カテゴリー: TULALA TRUITE(ツララトリュテ)
●イトウをベイトで狙う理由
イトウの釣りとは、どのような釣りをイメージするでしょうか。原生林の中、護岸の河口、そしてサーフ、時には用水路、とルアーに限定しただけでも、イトウ釣りの背景イメージはさまざまです。タックルは場所と使用ルアーで大きく変わります。イトウが定位する場所ついても、非常にバラエティ豊かである、としか表現の仕方がなく、時にはバスのように障害物に、時にはナマズのようにフラフラとしていたりカケアガリに動かず身を寄せ、時にはシーバスのようにベイトの群れに着いて何体かで狩りをしていたり、と、同じエリアの中ですらコロコロと効率のよい釣り方は個体やベイトによって変わっていきます。
原生林に端を発する川に由来するこれらの場所では、どうしても倒木や木の根といった複雑なストラクチャーが存在します。それらは時には着き場として、時にはリトリーブ、そしてファイト中の障害物としてどうしても切り離せない存在です。ラインのテンションと竿の挙動が一致しやすいベイトタックルを選ぶ理由の一つが、この障害物に対してのレスポンス。キャストコントロール性能はもちろんですが、リトリーブ中などでの挙動はガイドの足の短い分、竿を煽れば単純にその分糸も大きく動いて、水面の表面張力からのラインの切り離し(メンディングやトレースコース変更)はスピニングと比較すると圧倒的になります。
この他にも大きなフックを使用するビッグベイトなどのフッキング、フォールバイトのレスポンスやファイト時のパワーなどのメリットがこの短いガイドフット、つまり糸と竿の間隔には多大に存在します。またリールの構造上、太いモノフィラのラインなどを入れることができるため、細いPEでは困難となる風の中での釣りも、障害物の多いエリアでのファイトも安定感が変わってきます。こうしたメリットを複合して考えると、風が強く、障害物の多くなってしまうイトウの釣りではロングベイトロッドの必要性は非常に高い存在となります。
●思っているより小さいルアーも必要
イトウが捕食しているベイトがウグイやネズミなどある程度大きなものであれば、当然ルアーも大きなモノとなり、特に考えるほどのこともなくエルホリゾンテ78のような硬めで強いベイトロッドを使えます。ただ、短いシーズンの中でコロコロと捕食対象を変えたり、個体差の大きいイトウは、その身体からは想像し難い小さいベイトを捕食することも多く、時には管理釣り場で使うような数gのスプーンでばかり釣れたりすることすらあります。流石にそこまで軽いならばスピニングを選びますが、10g前後のスプーンを投げる条件でビッグベイトまでを使い分ける、という状況は普段から非常に多く見ることができます。クレールス810はまず、こうした日常的にルアーウェイトに差がある釣りに向けてブランクを構成しました。ティップを細く、バットを太くすることでもちろん弱い部分が存在しているデメリットも生じます。例えばビッグベイトをティップで投げるようなことをすれば破損の危険性も上がります。森の中で急な動きをした場合も、ビッグベイトロッドでは折れなかったはずの衝撃で破損することもあります。しかしながら、これらの釣り場にビギナーが足を踏み込まない現状を考え、開発をスタートしました。
●半径40、直径80cmのヘッドシェイク
こうした竿を作る中で、せっかく追従ティップ域の広い竿なのだから、ともう一つ想定したのがヘッドシェイクです。イトウはファイト時にいち早く上方から吊り下げる状態に持ち込むことで、頭が水面を割って酸欠状態にさせやすい魚です。リリース後の体力を残すため、また滑落や植物の踏み抜きなどの多い湿地でランディングを安全に行うためには最も必須のテクニックですが、この時に行うヘッドシェイクがビッグベイト竿やショートロッドでは非常に厄介なことが多いです。この時の首振り幅の視点が魚の腰側にあるのは誰にでも理解ができますが、魚種を多く釣るアングラーほど、頭部の印象よりも魚体が長いことを想定できていない場合があるのです。よくランディングされる90cm後半ほどのイトウでも真下への吊り下げ状態では半径40cm、横位置からの単純なヘッドシェイクで60〜80cmほどルアーアイの位置が動いてしまうことも多いです。さらにこれに合わせて円を描く反転をされ、返す刀で急に逆側に反転されると曲がり込んだ竿とラインは緩み、先述の強い竿、短い竿でなくともフックアウトすることもあります。追従速度をイトウと人間に合わせて竿が動く余白があるのが、人間の感覚に近い中弾性〜低めのティップのある長い竿となり、これが搭載できたことにより、高確率でのランディングに繋がっていくと考えられます。実際エルホリゾンテ78やモンストロで釣る場合はファイト時に足場を高く取ったり腕を上に伸ばしてこの首振りをかわしてきたのですが、クレールス810では咄嗟に腕が大きく上に出ることはありませんでした。
注釈※それでも少しでも巻きながら伸ばしたほうが安全です。6ft前後の短い竿は足場を探して、ときに木に登ってでも高く保ち、腕はなるべく緩く曲げます。伸ばしすぎるとそれ以上瞬時に高くあげる余白が竿にないためです。また、ブラックバスのジャンプでは竿を水中に入れる、などの対処がありますが、湿原や森のシチュエーションが前提であるイトウの場合、そこで酸素供給が戻ったりして走られるリスクの方が圧倒的に高くなります。こうした苦労から解放されたい思いが、このロッドに繋がっています。
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